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MICHELIN LATITUDE X-ICE XI2

2017.04.25
MICHELIN(ミシュラン)タイヤメーカー

アイスとドライを高次元で両立!


アイスグリップを高めるためには、ソフトなコンパウンドと広い接地面積、多数のサイプが必要。
しかしそれは逆に積雪路での掘り起こし力を弱め、舗装路でのハンドリングや耐久性も犠牲にしてしまう。
しかし、ミシュランの先進技術は、そのトレードオフの常識を根底から覆してしまった。
その先進技術を搭載したSUV用スタッドレスタイヤが、今シーズンから登場する。

 

従来比25%アップの氷上制動性能
ミシュランのSUV向けタイヤブランドは「LATITUDE」。そのLATITUDEブランドのスタッドレスタイヤ「X-ICE」が、この冬、「X-ICE XI2」へと進化した。
 
このLATITUDE X-ICE XI2、従来のLATITUDE X-ICEに比べ、ウェットブレーキ性能は同等以上を維持しながら、アイスブレーキ性能を約25%、アイストラクション性能を約31%向上させたという。性能向上を実現させるにあたって採用された先進技術には、高いブロック剛性により接地面の安定化とエッジ効果を目指した「アドバンス・トレッドブロック」がある。
 
これは、
①クロスZサイプを挟むように配置された複数の穴で、ブロック剛性を強化し、アイス路面の水膜除去、エッジ効果、接地面効果を発揮する「マイクロポンプ」
②路面を掻くエッジ効果を発揮する横方向と、ブロック剛性を支える縦方向のサイプを立体的に配置した「クロスZサイプ」
③低温での柔軟性と常 温でのトレッド剛性を高めるシリカベースの「フレックスアイスコンパウンド」の3つの技術を融合するもの。
これら技術の相乗効果が、力強いアイスグリップ と安定した走りの源と言える。
 
さらに、従来のLATITUDE X-ICEに比べて接地面積を大幅に拡大するとともに、接地面圧をトレッド全体に均一に分散。強力な粘着摩擦力を実現しただけでなく、偏摩耗も抑制し、ロングライフ化も果たした。
 
さて、以上がLATITUDE X-ICE XI2の製品特長となるが、実はこれ、2年前にデビューした乗用車用「X-ICE XI2」に投入された先進技術そのもの。しっかりと車重を支える剛性と、氷の路面に粘着する柔軟性。この両立が、スタッドレスタイヤの性能向上には不可欠だが、「アドバンス・トレッドブロック」をはじめとするミシュランのスタッドレスタイヤ技術は、それを高い次元で両立したからこそ、SUV向けにも問題なく対応できたのだ。

 

センター部はブロックではなくリブ形状とし、接地面積拡大と剛性確保を図る。方向性のあるパターンで、センターリブには斜め、サイドブロックには横方向に、クロスZサイプを配置した。縦横の両方に剛性を発揮する立体的なサイプのおかげで、氷上で強力なグリップを生み出しながら、舗装路でのしっかりとしたハンドリングを実現した。

 

左:トレッドゴムには、低温での柔軟性と常温での剛性を両立させたシリカベースの「フレックスアイスコンパウンド」を採用。中:ブロックの上下に一列ずつ配置されるマイクロポンプ。サイプ同様、吸水効果とエッジ効果を発揮しつつ、剛性を高める。右:Z形のサイプを、断面もZ形として立体形状としたクロスZサイプ。縦横それぞれに支えあうため、ブロック剛性が高まる。

 

左:氷上や雪上性能を追求するだけでなく、環境性能も考慮された。「GREEN-X」マークは転がり抵抗に配慮したことを表す。中&右:従来のX-ICEに対し、X-ICE XI2の接地面では、シーエリアの減少やプロファイルの適正化などで接地面積を増加させた上に、路面から受ける圧力をトレッド全体に均一に分散させている。グリップ力の向上とともに、偏摩耗を抑制し、ロングライフも実現。(写真はイメージです)


今回LATITUDE X-ICE XI2の試乗に使用したのは、フォード・エスケープLIMITED。タイヤサイズは標準装着サイズの215/70R16。なお、従来のLATITUDE X-ICEではスピードレンジがQ(160km/h)だったが、X-ICE XI2ではT(190km/h)へとより高速域まで対応するようになった。

 
高速巡航でもフラつかない、「高剛性」が高性能のカギを握る
試乗を行ったのは今年の4月。
関東はもちろん、雪国と呼ばれる地域でも、街中の路上に積雪がほぼ見られなくなる時期だったが、標高の高い山道ならまだ雪が残っているのでは…と期待して、裏磐梯を目指した。
 
試乗車はフォード・エスケープLIMITED。標準装着の16インチアルミホイールに合わせて、ノーマルと同サイズ、215/70R16の LATITUDE X-ICE XI2を履かせた。ノーマルホイールにノーマルサイズのタイヤだから、違和感がないのは当たり前。SUV向けスタッドレスとはいえ、太い溝やゴツいブロックといった、見た目のアグレッシブさは皆無だ。
 
雪道、特にカチカチに凍ったアイスバーンに利くスタッドレスタイヤは、ドライの舗装路には不向き…とはよく聞く話。氷の表面にピッタリと吸い付くためのソフトなゴムや、滑りやすい路面を引っかくために無数に刻まれたサイプなどは、トレッドブロックの剛性を下げ、乾いた舗装路へのグリップ力を弱める要素となるからだ。
 
しかし、LATITUDE X-ICE XI2を履いたエスケープは、うっかりするとスタッドレスを履いていることすら忘れてしまうほど、高速道路でもスムーズに、安定した走行を続ける。コンパクトSUVとはいえ、一般的な乗用車より重いエスケープの車重を、しっかりと支えている。ステアリングの手応えも充分。高速道路での100km/h巡航を、肩の力を抜いたままこなせた。
 
舗装路での安定したグリップ力は、高速を降りてからのワインディングで確認できた。路面はウェット、緩いRのコーナーが連続し、スピードのノリが良いワインディング。入り口から出口まで、アクセルを緩めずに走っても、接地面がピタリと路面に吸い付き、グッと踏ん張って駆け抜けられた。

 

路面凍結に気づかないほど強くグリップ
予想外にスポーティーなハンドリングに夢中になっているうち、峠の麓では路肩にしかなかった雪が、標高が上がって路上をも白く覆うようになってきた。
 
もっとも、交通量が多いため、路面の雪はシャーベット状に溶けている。この程度の雪、4×4モデルなら夏タイヤでも問題なく走ってしまうだろう。スタッドレスタイヤとしての性能を確認するには、圧雪路やアイスバーンが望ましい。
 
地図を頼りに枝道に入ってみた。路面は真っ白。しっかりと圧雪された、お誂え向きのテストステージだ。先ほどまでのワインディングと違い、コーナーのRもきつく、道幅が狭いので操縦に気を遣う。調子に乗ってスリップすれば、即クラッシュとなりそう…。
 
しかし、ここでもLATITUDE X-ICE XI2は確実に路面をとらえ続けた。雪が浅いのか? グリップ感は舗装の路面とさほど変わらない。しかし、停車してクルマから降りた途端、足が滑って転びそうになった。タイヤの轍があるところは、圧雪という よりアイスバーンに近い。よくもこんな路面に吸い付くようにグリップしていたモンだと驚いた。

 

新雪にも果敢にアタックできる
平坦な直線は圧雪路、坂やコーナーはアイスバーンというやっかいな路面を無難に走り抜けていく。ブロック剛性の高さは、ステアリングレスポンスの鋭さから充分に伝わってくる。それでいてアイスバーンにもしっかり粘り着く。なんとも不思議な感覚だ。
 
道幅が狭いながらも、きちんと圧雪された林道を奥まで進んでいくと、やがて降った雪がそのまま残っている路面が現れた。積雪量は最大20cmといったところか。まだ降って間もないフカフカの新雪。こんな時期にお目にかかれるとは、実にラッキーだ。
 
ここまではLATITUDE X-ICE XI2の性能に頼っていたが、ここからはエスケープにも4×4としての仕事をしてもらうため、「4×4 LOCK」のスイッチを入れる。
 
降ったばかりとはいえ、さすがに4月では湿った重い雪質になっている。タイヤが雪に埋まった瞬間、強い抵抗を受けて助走の勢いが一気に殺がれた。ステアリングを左右に切るのも重い。油断してるとスタックしてしまうかも…。しかし、アクセルをアオるように踏み込むと、グイッ、グイッと加減速の反応がある。この新雪でも、確実にトラクションが伝わっているのだ。
 
少々いじわるをしてみよう。
ステアリングを切って抵抗を与えながら、急激にアクセルを踏んでみた。豪快に雪が舞い上がり、四輪が空転する。しかし、空転しながらも少しずつ車体が動いており、やがて車速とタイヤの回転が同期していく。トレッド面にビッシリと並んだブロックからは、アイスバーンのような路面へのグリップしか想像できなかったが、雪への食いつきの良さは相当なものだ。
 
トラクションの強さは、制動力の強さにも通じる。雪道ではABSが働いて、制動距離が伸びてしまいがちだが、無数に刻まれたサイプと、そのサイプをしっかりと利かせるブロック剛性の高さによって、スリップを最小限に抑えて確実に停止できた。

 

左:アイスバーンに最適化された密集ブロック&柔軟ゴムの組み合わせながら、積雪路もしっかりと掘り起こす。タイヤの通過後にはトレッドパターンと同じ氷柱が残される。右:トラクション同様、制動力も強力。接地面の広さとエッジの多いブロックが、ABSによる空走を極力抑えてくれる。

 

これだけ雪に利くのに寿命が長い
シャーベット、圧雪、アイスバーン、新雪と、タイプの異なる雪質を走って、LATITUDE X-ICE XI2の万能ぶりを充分に味わった。ソフトコンパウンドのトレッドゴムと、深く、長く、数多いサイプが、雪や氷の路面の滑る要素をことごとく排除してしっかりとグリップを維持する。それでいて、ブロック剛性が高いから、ハイスピードでもヨレず、確実にトラクションが伝わる。
 
柔と剛。本来両立しえないふたつの性質を、ともに備えたことが、LATITUDE X-ICE XI2のアイスグリップ、スノートラクションを飛躍的に高めたと言える。しかもそれだけではない。良く利くスタッドレスタイヤの弱点であるドライ路面でも、安定した操縦性を保ち、ロングライフを実現しているのだ。
 
実は、この取材でLATITUDE X-ICE XI2を履かせたフォード・エスケープは、その後、数ヶ月にわたって本誌が借り続け、6,000kmほど走行した。初回の裏磐梯での雪道取材以外は、高速道路や市街地などの舗装路。ときにはダートの林道を走ったり、ワインディングロードを飛ばしたり…といった、スタッドレスタイヤにとっては想定外のハードな使用もあった。つまり、その間はスタッドレスではなく、まるで夏タイヤのように使ったわけだ。
 
正直、スタッドレスタイヤを履いていることを意識することはなかった。それほど、舗装路での直進性や操縦性に違和感がないということ。そして、6,000km走行後のトレッド面の摩耗は、「ひと皮剥けた」程度に過ぎなかったことにも驚いた。
 
凍結路で強力なグリップ力を発揮しつつ、積雪路でも充分なトラクションを確保。しかも、SUVの重い車重を支える剛性と、長期の舗装路走行でもダメージを受けない耐摩耗性を持ちながら…という欲張りなスタッドレスタイヤだ。車種や用途を問わず、幅広いSUVオーナーにお勧めできる。

 

試乗用タイヤとエスケープの組み合わせは、雪道試乗後も数か月にわたって編集部のアシとなった。その間の走行距離はおよそ6,000km、摩耗は1mm程度。冬場だけの使用なら、3〜4シーズンは余裕で使えるはずだ。