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GEOLANDAR M/T+

2017.04.19
YOKOHAMA(横浜ゴム)

重量級SUVとの相性は?

リアルオフローダーの定番タイヤとして、不動の地位を得ているジオランダーM/T+。純正サイズはもちろん、オフローディングカスタム用のタイヤとしても人気だ。今回は群馬トヨタRVパークのデモカーに装着された、「LT265/70R17」というちょっと大きめサイズのジオランダーM/T+でインプレッションしてみたい。

ARBのフロントバンパーや60mm車高アップ、マットブラック塗装のオールペンが施され、現代的なオフロード仕様に仕上げられたFJクルーザー。タイヤサイズも大径化されているように見えるが、実は純正と全く同じサイズだ。北米育ちのFJクルーザーゆえ、タイヤサイズはもともと”ちょっと大きめ”なのである。ジオランダーM/T+特有のワイルドなトレッド&サイドウォールのパターンがさらに実際のサイズ以上に大きく見せ、強いインパクトを与えている。

 

普段づかいできるMT

まずは一般道、高速道路を通って目的地のオフロード・フィールドまで移動。オンロードにおける低ノイズ性、低振動性は数あるマッドタイヤの中でも抜群だ。アグレッシブなトレッドパターンに見えるが、舗装路走行時のパターンノイズは極めて小さく、特にFJクルーザーのようなラダーフレームを持つ重量級SUVに装着するとほとんど気にならない。かすかに聞こえるノイズも低く唸るような音質で、神経に響かないのが良いところ。もちろん、オールテレーン系タイヤに比べれば多少賑やかではあるが、個人的にはオフローディングだけでなく、街乗りに使用しても全く問題ないレベルだと思う。

快適性だけでなく、舗装路での直進安定性、コーナリング特性も優秀だ。比較的ショルダーが張ったデザインにもかかわらず、ワンダリング(路面の凹凸や轍などでステアリングが取られ、ふらつくこと)が少なく、純正オールテレーンタイヤ同等の性能を確保している。また、常識的な速度で運転している限り、コーナーでタイヤがスキール音を立てるシーンもまずない。一般的にマッド系タイヤは舗装路面が極端に苦手…というイメージがあるが、幅広い路面状況に対応できるのもジオランダーM/T+が持つ長所のひとつだ。グリップの限界が高いうえ、グリップを失うポイントも見極めやすいためにウェット路面などでもコントロールしやすいのである。しなやかなコンパウンドと、計算されたトレッドパターンによる効果だろう。

少し話が逸れるが、ここ数年の間にリリースされたマッドタイヤにおけるオンロード性能の進化には目を見張るべきものがあり、一世代前のソレとは比較にならない。マッドタイヤを履いている時にオンロードで怖い思いをした…と語られる体験談の多くはひと昔前のモデルでのことであり、そうした人にこそ、ぜひ現代のマッドタイヤを体感して欲しいと思う。

そうしたハイグリップ路面での優秀な特性は、フラットダートでのパフォーマンスにも良好な結果をもたらしている。トラクションの良いダート路ではオールテレーン系タイヤの方が適切と言われているが、ジオランダーの場合はM/T+でも十分。今回は河川敷の砂利道をちょっと走っただけだが、幅広い路面対応能力を持つ「コンパティブルコンパウンド」、方向性パターンと垂直に配置された「クロスカットグルーブ」が安定した走りをもたらしていた。耐カット性を高めるサイドウォールのプロテクターも安心材料のひとつだ。

 

あらゆるオフ路面に対応

さて、ジオランダーM/T+が本領を発揮するステージと言えば、やはりマッド路面。アグレッシブなパターンから期待される通りの性能を見せてくれる。

まずは表面がヌルヌルで足で上るのがやっと…というモーグル地形にゆっくりと侵入。ひとつひとつのサイズが大きく、エッジの立ったブロックがしっかり効いているのがよく分かる。この程度のオフロードなら、指定空気圧のままでもトラクション能力は十分。ブロック下部が張り出したデザインとなっており、サイドウォールを轍の側面に擦りつけながらトラクションを得るような走りも得意だ。路面のキャンバー角度によっては横にスライドしてしまうが、空気圧を落とせばさらに強力なグリップ力が得られるだろう。

より深い泥濘地に足を踏み入れると、「32度方向性パターン」の優れた排土性能が確認できる。溝の幅が広く、しかもV字型に連続したトレッドパターンとなっているために泥が効率よく掃き出されるのだ。このトレッドパターンには、回転することによってタイヤを浮かせる「フローティング効果」も持たされており、空転している状態からの脱出性能にも期待できる。もちろん、廃道などでのエクストリームなオフローディングシーンではいわゆるトラクションタイヤに分があるものの、岩場や砂地などを含めた総合的なオフロード性能を考えた時、ジオランダーM/T+の優秀さが際立ってくる。

ビギナーから本格派まで

私は長い間、自分のクルマでもジオランダーM/T+を愛用してきた。このタイヤが持つ最大の特長は、マッドタイヤ本来のオフロード性能とオンロードでの快適さ、舗装路でのグリップ力、そしてデザイン性とのウェルバランスだと思う。日常の通勤から週末のオフローディング、さらに競技シーンまで幅広く対応できるマルチパーパス性は特筆すべきものだ。シーンによってタイヤを履き変える必要がなく、「ひとつのタイヤで済んでしまう」のはコスト意識の高いユーザーにとってもメリットとなるだろう。しなやかなトレッドコンパウンドを採用しているがチッピング(オフロード走行によるブロックの欠け)は少なく、従来モデルに比べライフサイクルも格段に伸びている。

ジオランダーM/T+の価値は、短時間のインプレッションでは分からないところにもある。それは耐久性の高さ。オフロードでのプロテクション性能が重視されており、ラリーなどのコンペティションシーンで数多く採用されてきた実績がある。そうした本格な設計も、多くのオフロードファンに愛されてきた理由だ。
文/田端邦彦 写真/山岡和正 協力/群馬トヨタRVパーク