静岡県・浜松市北部、天竜川中流周辺は昔から林業がさかんだった地。山から切り出した木材をいかだにして天竜川に流す水運業も発達した。そんな天竜区には今でも、約150km(!)もの未舗装林道が残っているという噂がある。その噂を確かめるため、今回は静岡県・浜松市北部林道群へとツーリングに出掛けた。
旅を共にするのは、アピオのコンプリートモデル「TSB」をベースとしたデモカー。装着されているサスキット「スーパーつよし君 ビルシュタイン安心キット」はA2000Tiチタン配合コイルスプリング「スーパーつよし君(45mmUP)」と、オリジナルのビルシュタイン製ショックアブソーバーを組み合わせ、フラットダートやワインディング、高速走行での性能を重視した特徴的な仕様だ。ラテラルロッドや偏芯ブッシュによって車高アップ補正がなされているのはもちろん、今回のデモカーにはさらにバネレート純正比28%アップの強化スタビライザーや、リアLSD「G-TRAC」も装備されている。ジムニーの車体サイズといい、カスタム内容といい、林道トレイルにこれほど適したクルマはない!
45mmの車高アップを実現するスーパーつよし君ビルシュタイン安心キットに、タクティカルフロントバンパーガーニッシュなどの機能的なエクステリアパーツ、さらにルーフキャリアやリアラダーなどの冒険装備を備えたアピオのデモカー。後ろ姿もスタイリッシュだ
東名高速道路を磐田インターで下り、天竜川沿いに北上。その名のごとく竜のように蛇行する川の流れに沿って走る国道152号、秋葉街道をドライブする。この辺りと言えば天竜スーパー林道が有名だが、現在は全線舗装済み。秋葉ダムの手前から西側に折れ、「龍山」と呼ばれる地区の林道に入ってみることにした。
オフロードへと入る前に、まずはTSB号の走りをオンロードでチェック。モノチューブの高圧ガスショック…と聞くと、弾むようなハードな乗り味を想像する方がいるかもしれないが、TSBのソレは全く違っている。確かにスポーティだが挙動は終始滑らかで、ギクシャクしたところが一切なく、重心(車高アップ量)とロールスピードなどのバランスが素晴らしい。特にスポーツ走行を意識しなくても、乗りやすいのが特長だ。 リアデフに内蔵されているLSDはかなり強力に差動を抑える設定で、コーナー出口でアクセルを開けていった時のダイナミックな感触は独特。オープンデフ車から乗り換えた直後は違和感を感じるかも知れないが、一度慣れたら元には戻れない、クセになる気持ち良さがある。このキビキビした走りは、ジムニーでのワインディング走行が楽しくなる種類のものだ。
さて、天竜川から無数に伸びる支流のひとつ、白倉川付近からいよいよ林道探索を開始。県道361号線から小松野林道と思われる所を右折する。入り口からいきなりダートが始まったが、僅か1.8kmほどの所で地面が突然なくなっていた…。そこは小松野林道ではなく、まだ建設途中の林道(のちに夏秋林道と判明)だったのだ。県道361号線に戻り、しばらく白倉川沿いを走って、今度は本当の小松野林道・入り口に。道幅は狭く、路面も少々荒れ気味だが、雑草や藪はなく、林業従事者に現役で使われていることが分かる道だ。沢の近くを走る林道だけに展望が開けているところは少ないが、未舗装区間約8kmとなかなか走り応えがある。小松野林道は途中から作業道・菜畑沢線に名を変え、再び県道に合流する。合流する少し手前の菜畑沢付近では展望が開け、山の景色が綺麗だ。
小松野林道だと思って侵入した道は、建設途中の夏秋林道だった。約1.8km地点で路面は突然なくなり、林になっていた
この時点で既に夕暮れ間近になっており、少々慌て気味での林道行となったが、スピードを上げてもTSB号の走りは安定している。ハードめにセッティングされた脚は大きなギャップをダンダンと小気味良くいなし、ツイスティな山道を軽快に走らせてくれる。市販車の限られたストロークの中で、大入力をしっかり収束させるフトコロの深い乗り味はビルシュタインそのものだ。 リアデフにはLSDが入っているのでコーナー出口からアクセルを開けるとスライド気味になるが、跳ね馬を手懐ける感覚がまた楽しい。もっとも、ドライバー側のシートにはRECAROシートが装着されているために多少荒っぽい運転をしても快適だが、助手席側はノーマルシート。当初の予定ではもう1本林道を走ろうと思っていたが、山岡カメラマンがぐったりしてきたので早めに宿に帰ることにした。
今日の宿は天竜地区林道群のド真ん中にあるペンション「龍山ふるさと村」。ここの主人が林道情報にめっぽう詳しく、お手製の林道マップを手渡してくれた。林道ツーリングに訪れるオフロードライダーが多く宿泊するらしく、路面状況から熊、猪、狸の出没情報まで詳しく記載されている。夜は山岡カメラマンと宿の名物、猪鍋をつつきながら翌日のルートを考え、早めに床に就いた。なにせインターネットはもちろん、携帯電話も繋がらなければ部屋にテレビもない、寝る以外にやることが何もないのだ!
龍山地区林道群の中心にあるペンション 龍山ふるさと村。ご主人は周辺の林道情報に詳しく、自身もデリカスターワゴンとランクル100に乗る四駆好き。
こちらが、ふるさと村名物の猪鍋。クセがなくて美味しく、食べると体が温まる。他に熊鍋もあり。
オッボーキ林道の落石箇所。四駆なら楽々乗り越えられるが、ライダーや乗用車は注意されたい。
翌朝は龍山ふるさと村の西側にある、オッボーキ林道に出かける。お手製地図に”自然豊かな超悪路”とあるので心して臨んだが、実際には頭大の落石がゴロゴロしているだけで、路面自体は荒れていない。確かにオフロードライダーにとっては要注意の道だが、ジムニーの走破性をもってすればオンロードも同然だろう。オッボーキ林道が入り口から約4.8kmでゲート閉鎖となっていたので、右折して地八林道支線へ。ここで今回のツーリング一番の展望が開けた。
山を一気に下って出馬(いずんま)と呼ばれる集落に下り、再び和山間(わさんま)峠林道、橿山林道へ。林道は山に網を張ったように、縦横無尽に走っている。今回、2日間通して50km以上のダートを走ったが、龍山ふるさと村のオーナーによると和山間峠付近だけでも約150kmの未舗装区間があるらしく、完全走破には程遠い。 崩落や倒木などで行き止まりになっているピストン林道が多く、周りは杉の木ばかりで、展望が開ける場所も少ない…と景色目的のツーリングには向かないかもしれないが、私はそこに林道が本来あるべき姿を見た思いがした。人の役に立たなくなった道は、閉鎖される運命だからだ。
地図に載っていない未知の林道を探索するのに、このジムニーは最高のパートナー。ダートと高速道路、ワインディングでの走りをメインに設えられているが、45mmの車高アップやしなやかにストロークするサスはクロカン走行をも許容する。自然の中ではよほどの廃道でもない限り、この走破性を活かせるステージはないだろうが、安心感が違うというものだ。 また、単に走りが良いだけでなく、ルーフキャリアやベッドキット、ラリーマップボックスなど旅で便利な装備を満載しているのもポイント。このジムニーなら、一台でどこにでも行け、何でもできる気がする…そんな頼もしい仕様だった。
和山間林道、橿山林道にも多くの支線が存在するが、ほとんどはご覧のように倒木や崩落などで行き止まり。ただ、先の分からない道を探険するのも楽しいものだ
アピオのコンプリートモデルTSシリーズのほとんどに標準装備されるタクティカルフロントバンパーガーニッシュ。ジムニー用だけでなくジムニーシエラ用もあり。フロント下部を保護するフロントセンターバンパーも装着されている
デパーチャーアングルを拡大するだけでなく、バックライト内蔵で機能的なリアFRPバンパー
スポーツ走行向きのサスセッティングだが、クロカン時のストロークも十二分。これならオフロードコース走行なども楽しめる
このデモカーは、コブラエアインテークなどのオプショナルパーツが全て盛り込まれたフル装備仕様。見た目の迫力をアップさせつつ、インタークーラーの冷却効率も向上させる
マットブラックカチオン塗装が施されたブラックスチールタイプのサイドシルガード。1.6mm厚スチール製・多段曲げ加工で強度アップしてあるからクロカン走行でも実用的
アピオの定番A200Tiチタン配合コイルスプリングと、ビルシュタインと共同開発した専用ショックアブソーバー、ラテラルロッド、偏芯ブッシュなどが組み込まれた脚まわり「スーパーつよし君 ビルシュタイン安心キット」。デモカーには強化スタビライザーも装備されていた
TSBの標準装備に加え、リアデフには力強い差動制限力を生むLSD「G-TRAC」を装備。またジェットストリームフィンなど独特な構造によって排気効率と低騒音を実現した静香御前マフラーも装着されている。突起物規制はもちろん、「マフラー認証制度」にも対応
ジムニーのために開発されたアピオのオリジナルアルミホイール「WILDBOAR X 16インチ」。レイドブラック、ブロンズ、ガンブラックなど4色を用意している。写真はハイパーメタリック。
ベッドキットの一流メーカー「オグショー」とアピオのタイアップで生まれたハイクオリティなベッドキット。大柄の男性でも横になれる居住スペース、剛性の高い造りが特長だ。グローブボックス上の開口部とリアホイールハウス、フロアを支点とするため、シートに負荷をかけないのがありがたい。フロントベッド未使用時はコンパクトに格納(下左)できるほか、キットを完全に取り外すこともできる。
純正エアバックをそのまま使用できるアフターレザーステアリング。デモカーにはサイドグリップ部にバックスキンを使用し、センターマーカーにイエローを使用した限定仕様が装着されていた。30本の限定販売!
ラリーのコマ図などを収納しておくのに便利なラリーマップボックス。今回の取材時も現地の地図を入れておいたところ、大変重宝した。
ツイントリップとGPSはラリー競技の必須装備。今回は未舗装区間を図ったり、走行軌跡を地図上に残すために活用。
[アピオ・コンプリートモデルTSシリーズ装備表]
コチラは「龍山ふるさと村」でいただいた手書きの林道マップ。