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ジオランダH/T-S

2017.04.25
YOKOHAMA(横浜ゴム)タイヤメーカー

クロカン四駆をオンロード用と割り切れる人には最高の選択肢

H/T。ハイウェイ・テレーンと呼ばれるSUV用オンロードタイヤは、今やこのカテゴリーのメインストリームになっている。オンロードで快適に、コーナリングや高速走行時でも高いパフォーマンスを発揮するH/Tは舗装路だらけの日本に合っているからだ。急増中の都市型SUVとの相性もいい。

ジオランダーH/Tが誕生したのは’97年。四駆ブームのまっただ中で生まれた初代 H/T には、「オフロード四駆に驚きのオンロードパフォーマンスを与える」という役割があったが、時代は変わり、クルマも変わった。SUVはさらにパワフルになり、最高速もコーナリング性能も上がった。そしてユーザーの目も肥えた。より静かに、乗り心地よく、ロングライフで安全に。そして省燃費で環境に優しいというエコな性能も望まれるようになった。

これらの要求に応えるため、’06年に登場した新型 H/T-S は A/T-S 同様、グローバルスペックをキーワードにゼロから開発された。両者を見比べて共通する要素が多いのは、そのキーテクノロジーに普遍性があるからだろう。オーソドックスな表情にヨコハマの自信が感じられる。

オンロードでは純正タイヤより剛性感に優れ路面からのフィードバックも多いのだが、乗り心地はいい。特に中高速域でのフィーリングがいい。路面段差のいなし加減も上手い。ハンドリングはナチュラル。直進安定性も優れている。グリップレベルも高く、ブレーキ性能はもちろんコーナリングの限界性能もA/T-Sとは段違い。車内に進入するパターンノイズもキッチリ抑えられ、これなら助手席や後席の乗員も快適に過ごせるだろう。

長距離走行が楽なことも大きなポイントだ。路面からのフィードバックを意識下で常に感じつつも、手を添えているだけでどっしり走る。さほどシャープではないステアフィールだが、いざと言うときは行きたい方向へスッとコントロール可能。轍にステアリングを取られることもなく、雨でもグリップ感が高い。停止距離だってM/T+やA/T-Sの比ではない…。

ドライバー目線で言うと、疲労感の少なさは乗り心地や振動といった体力的な理由だけで得られるものではない。奥行きのあるポテンシャルに安定感ある走り。無意識に感じる「安心感」が精神的な疲れを少なくしているのだ。

つまるところ H/T-S は「クルマを楽に、速く、そして長く、安全に乗る」ための性能に長けている。兄弟の M/T+ がオフロードへの冒険の扉を叩き、A/T-S が走りの世界を広げてくれるタイヤであるのに対し、H/T-S はより日常生活に即した性能を追求しているのだ。

したがって四駆に乗ってはいるがそのほとんどがオンロードユース。年間を通してオフロードに踏み入る機会はほとんどない、というユーザーにとっては最も実利の大きなタイヤチョイスとなる。ある意味、愛車の使い方を熟知している人にお勧めのタイヤなのだ。


新しい H/T-S はデザイン的に A/T-S と共通する要素が多い。両者はジオランダーの中でも「第二世代のタイヤ」と区別されるもので「グローバルスペック」をキーワードに世界市場向けに開発されたもの。耐久性や耐摩耗性の面で著しい進化を遂げている。


A/T-Sとは対照的に柔らかくラウンドしたショルダー。そして丸みのあるブロック。よく比べるとA/T-Sとは異なる処理が多く見受けられる。これが、オフ性能を大切にするA/T-Sと、オフ性能をエマージェンシー用と割り切るH/T-Sとの違い。ただし4本の縦溝の太さは共通。ハイウェイ・テレーンの目指す性能として、ウェット性能や耐ハイドロ性の確保は必須なのだ。


接地面の形や圧力分布を適正にすることで偏摩耗を防いだり耐摩耗性をアップさせることができる。A/T-Sの接地面はスクエアでムラがなく、緑色が示す通り接地圧も均等に広がっているのが見て取れる。走行時のタイヤの歪みも抑えられ、転がり抵抗も少ないという。


A/T-Sに比べ溝が浅くブロックも丸みを帯びている。溝は排土性より排水性を意識したもので、明らかにオンロード寄りの造り。ただしメーカー純正のオンロードタイヤに比べればずっと横溝が太くアグレッシブ。A/T-SやM/T+に見られたサイドウォールのプロテクターはない。


ウェット路でのテスト。限界性能とコントロール性はA/T-Sを大きく上回る。ニュートラルステア付近の遊びもなく、レーンチェンジの際も操作に対してダイレクトに反応する。


ABSを切ってのフルブレーキングテスト。ジャダーが出ることもなく、短い距離で真っ直ぐ止まる。とても安心感のある感触だ。テスト後のトレッド面を見てもダメージは少ない部類だ。


ダートでは純正タイヤより強いトラクションを発揮する。林道走行やドライの河原を移動する程度なら十分。ただし浮き砂利や水気のある路面ではA/T-Sよりはるかに空転しやすく、土の目詰まりも起こしやすい。積極的にオフロードを走るためのタイヤではない。