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このタイヤが登場した’96年当時、オンロードの乗り心地、静粛性、操縦性と安定性においてここまで優れたマッドタイヤは他になかった。従来マッドタイヤといえばオフロード性能に特化してオンロード性能をあまり省みない造りが当たり前。ディープなクロスカントリーファンだけが選ぶ、やや特種なタイヤだった。
しかしジオランダーM/Tの登場により、日常の足として九割九分オンロードで走るような一般ユーザーにもファン層を拡大。次いでファッションとして街乗りに使うユーザーも増えていった。マッドタイヤを世間一般に浸透させたという意味でこのタイヤの果たした役割は大きい。
ただし初代モデルは耐摩耗性にやや難があり、性能はいいが寿命も短かめだった。さらにダート路でテールをパワースライドさせるような状況で時々ひっかかるクセがあり、それがダートでのコントロールをやや難しいものにしていた。むろん、ダートであればA/T系を使えば済む話だが、M/Tはマルチパーパスであるが故に高いレベルを期待されたのだ。
しかし2004年、「M/T+」へのモデルチェンジでこの問題も解決した。耐摩耗性が従来比34%向上し、走行距離の多いユーザーにも十分な耐久性を確保。グリップ性能や快適性、操安性などのオンロード性能はそのままに、マッドにおける排土性やトラクション性、ラリーやダートでの横方向からの衝撃防御力など、より本格的なオフロード性能を充実させた。ダートでのコントロール性も向上し、その結果晴天でも雨天でもマルチに使えるタイヤとして多くのダートイベントで愛用されるようになって行った。
実はこれらの改良にはアジアクロスカントリーラリーへの参戦も大きく影響している。ヨコハマは過酷なラリーをテストフィールドにすべく改良型のプロトタイプをいちはやく投入。結果をフィードバックさせつつ製品開発を行って来た。泥、岩、砂利、渡河にアスファルトなど、あらゆる路面を2000km以上走破しながら熾烈なタイム争いが行われるアジアXCラリー。この大会で結果を残せたからこそ今のM/T+がある、と言っても過言ではない。
もちろん、ジオランダーM/T+があらゆる面でライバルより優れている、と言うつもりはない。他にマッド性能やロック性能にそれぞれ特化したタイヤがあるし、時にジオランダーM/T+は重いと言われることもある。だが、その評価はタイヤの一面でしかない。極悪オフロードからハイスピードダート、そしてオンロードに至るまで競技の限界ドライビングに耐えられる動的性能と構造、剛性を併せ持つタイヤという意味で特にラリーイストから高い評価が与えられているのだ。対パンク性能でも、これほど信頼できるタイヤはないと彼らは言う。
モデルチェンジは8年前と一見古く見えるが、マッドタイヤの世界では決して古いものではない。国内のカスタマイズ市場では新しくなったBFGのMTとほぼ二分する人気を誇っており、その実力はいまでもトップクラス。多くのユーザーに現在進行形で愛され続けている定番のタイヤだ。

外見上の特徴は32度のV字パターン。クルマに組む時の向きは1方向に限定されるが、タイヤの回転とともに泥や水を排出する効果に優れ、強力なトラクションを発揮する。新型M/T+ではV字溝とクロスする溝を1本増やし、ブロックの「角」を増やすことで路面に対するエッジ効果をアップ、全方向への踏ん張りと安定性を強化している。

タイヤのフットプリント(魚拓のようなもの)。トレッド面は大きなブロックと深い溝で構成され、そのシー/ランド比(トレッド全体に占める溝の割合)はなんと56%。溝面積のほうが多いという非常にアグレッシブな構造になっている。泥場ではこのくらい太い溝がないと、すぐに目が詰まってしまうのだ。

極悪の泥場でもこの通り。溝が詰まり切ることなくブロックのエッジがしっかり顔を覗かせている。このエッジが接地面で泥を掴むのだ。もちろんタイヤを回転させれば泥は太い溝から簡単に吹き飛んでいく。

タイヤの横っ腹、「サイドウォール」にまでブロックのようにぶ厚いプロテクターが配置される。オンロードでは考えられないだろうが、オフロードではタイヤの横に鋭利な石や岩が当たり、カットバーストでパンクすることが多い。それを防ぐのがこの出っ張りだ。この写真では、トレッドブロックの端が交互に凹凸を繰り返している様子もよく分かるだろう。

オフロードでは空気圧を低くする、というテクニックが存在する。こうすることで、①段差に対する当たりが柔らかくなり、クルマが跳ね返らずに前進できる。②接地面積やグリップを増やし、トラクションを増すことができる。③接地面でのゴムの変形により泥が剥がれやすくなる。などの効果が期待できる。タイヤは写真のように大きく変形するが、この時サイドウォールを守ってくれるのが例のプロテクターだ。デザイン性だけでなく、実用性はとても高い。

ジオランダーM/Tの魅力は、その豊富なサイズバリエーションにある。例えばジムニー用。近年のカスタマイズユーザーの増加に合わせ、専用タイヤを3サイズも用意している。左が185/85R16(外径722mm)、右が6.50R16LT(外径757mm)、この他に純正タイヤと同じ175/80R16(外径692mm)が存在する。185/85R16はタイヤハウス内に僅かな加工が、6.50R16LTは2~3インチほどのリフトアップが必要になる。詳しくはオフロードショップに問い合わせて欲しい。

近年のインチアップ需要に応えたのが左のタイヤ(37×12.50R20)。マッドタイヤながら20インチの大径ホイールを履く。外径は1mに達しようかという大きさ(936mm)なので、ジープラングラーといえどサスペンションの改造が必要だ。右はほぼ純正サイズと同じ265/70R17(外径812mm)