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一般的にウインチの操作は運転席に乗り込んだドライバーが行う。が、直前視界はドライバーの死角にあり、ラインが確認できない。オマケにウインチやドラム内の様子も目視できず、アンカーやワイヤーすら見えないこともしばしばだ。
仮にドラム内のワイヤーが乱巻きになったり、モーターから煙りが出ても気付くことができず、アンカーやストラップが悲鳴を上げてもエンジン音とモーター音に包まれた車内では聞き取ることができない…。こんな環境では安全かつ効率的なウインチングは難しい。
これを打破するには “目” と “耳” を増やすのが一番効果的。ふたりで協力しながらウインチングするのだ。ひとりは「ドライバー」としてウインチとクルマの操作専門。もうひとりは外にいてアンカーを見張ったり、クルマをナビゲートしてあげればいい。後者をウインチの世界で「アンカーマン」と読んでいる。
ところが、ウインチング中のドライバーは外からの指示を聞き取りづらい。さらに発電機(エンジン)の回転数を上げて電力を確保する等のテクニックを駆使すると、声による意志伝達はより一層難しくなってしまう。
そこで登場するのが “手” による合図。ここでは、その代表的な例をご紹介しておこう。
①ウインチのワイヤーを巻け!
人差し指を肩の高さより上げ、上向きにクルクル回す。
②ウインチのワイヤーを出せ!
人差し指を肩の高さより下げ、下向きにクルクル回す。

③ワイヤーを少しだけ巻け!
細かく断続的にチョンチョンとスイッチをいれる指示。人差し指と親指をくっつけたり話したりする動作で表す。電動ウインチの牽引スピードは変えられないので、最後のあと数十センチ、なんて時に役立つ。

④ウインチ停止!!
両手を大きく広げる。ドライバーは四の五の言わずスイッチをオフにすること。ウインチングと同時に、タイヤで駆動力をかけている場合はクルマも同時に止める。

⑤駆動アシストをかけて!
ウインチングに加え、タイヤを駆動させたい時に出すサイン。腰の辺りで両手をタイヤのように回す。

⑥ブレーキング!!
ドライバーにフットブレーキを踏ませる時のサイン。両手を胸の辺りで合わせる。

⑦ステアリングの向きを変えて
両手の親指または人差し指でステアリングを着る方向を指示する。慣れるととても便利。
以下は私が実際に使っているバリエーションだ。
・両指を真っ直ぐ立てる:ステアリングを真っ直ぐに戻して!
・両指で大きく方向指示:ステアリングを大きく切って
・片手で進行方向を指示しつつもう片方の手でゼスチャー:
「切ったまま前進」「違う違うステアリング切りすぎ」など
これらのサインは、遠目でも分かるようオーバーアクション気味に行うことが大切だ。
余談だが、この時のカメラマンがこの手合図をよく使う。ウインチングではなく、クルマのロケの時に運転席にいる私との意思疎通に使うのだ。
外からクルマを見ているカメラマンには、どの位置なら背景がキレイで、どの角度なら光の当たり具合がいいのか一目瞭然。私はカメラマンを信頼してしのごの言わずクルマを動かすマシーンに徹すると互いの仕事が早く進む。
実はウインチングも同じなのだ。
ドライバーがアンカーマンを信頼し、アンカーマンの指示を忠実にこなしていればスムーズに行く。よく、運転席からあーでもないこーでもないと外の仲間に指示する光景を見かけるが、これはとっても非効率的。アンカーマンが目で見たことを口でドライバーにフィードバックしようにも、全ての状況を言葉にできないし、声も張り上げねばならないからだ。
そんな状況で失敗しても原因があやふや。さらにドツボにハマりかねない。
ウインチの場合、アンカーマンこそがイニシアチヴを取るべき存在。責任のほとんどはアンカーマンにある、と言ってもいい。ライン取りからワイヤー&アンカーの状況、ドラム内の様子を含め、あらゆることに注意を払って的確に指示を出す…。
そう。ウインチはベテランが車外に出たほうが上手くいくものなのだ。
じゃあビギナーはシートを暖めていればいい? と言えばそれでは上達しないだろう。アンカー選びからワイヤーの連結までひととおりベテランに教えてもらった上で、どちらがアンカーマンになるか相談すればいい。
最終的にはベテランから文句の出ないアンカーマンになって初めて “独り立ち” と言えるのだ。