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ウィンチングの基本〜第三話

2017.04.29
TRAIL(トレイル)パーツメーカー

■第三部:ウインチングの注意点

ここでは、実作業上の注意点を箇条書きにしておこう。映像では表現していないので、ぜひ読でおいて欲しい。
●アンカーとウインチを結ぶ一直線上には決してはいるべからず

ワイヤーのテンションが張っている時にアンカーとウインチを結ぶ空間には絶対に入ってはいけない。アンカーマンはあらゆる状況を確認しやすい位置に立つべきだが身の安全が第一。万一ワイヤーが切れ、ワイヤーが暴れたとしても身の安全を守れるだけの距離を確保しておくのだ。
 
テンションのかかったワイヤーを跨いだりくぐったりする行為は論外。その瞬間にワイヤーが切れれば、大変なことになる。ワイヤーは絶対に跨いではいけない。
 
私はスタック車の救出時に被牽引車のフックが外れ、目にもとまらぬ速さでウインチ車に激突した例を知っている。これがもし人に当たっていたら…考えるだけで恐ろしい。お分かりいただけるだろうか。アンカーやウインチ車の真後ろにも踏み込んではいけないのだ。
 
もしどうしてもその空間に近づく必要があるならドライバーに依頼してワイヤーを送り出し、テンションを緩めてからにすること。何よりも人命の優先。ウインチを扱う人は、この鉄則を周りにいる人全てに徹底する義務がある。
 
●ワイヤーの飛びはね防止も効果的
万一ウインチング途中でフックが外れたりワイヤーが切れた場合に備え、ワイヤー上に毛布などを被せておくといい。こうすることで「ワイヤーの飛び跳ねが防止できる」と本場アメリカのウインチ教本にも書かれている。毛布がなくともクルマのフロアマットなどでも代用は利く。
 
アンカーマンは絶えずドラムに注意を払え
 

“片巻き” や “乱巻き” のまま巻き取りを続けるとワイヤーが傷むことは第一話で述べた。最悪の場合ワイヤーが挟まって引き出せなくなってしまう。ウインチドラムをどちらに回してもワイヤーが巻き取られてしまう場合はウインチングを中断してワイヤーを正しくまき直すことに徹したほうがいい。
 


●バッテリーの使い過ぎとモーターの加熱に注意

長時間ウインチングをしているとモーターはどんどん加熱し、バッテリーはどんどん弱って行く。バッテリーに関してはウインチング中にエンジン回転数を上げ、発電量を増やすという方法もあるが、モーターの加熱は作業を止めねば収まらない。時には作業を休み、コンディションの回復を待つのも大切なことだ。


この場合、電気を大食らいするエアコンを切るのはもちろん、ヘッドライトやフォグランプ、ワイパーなどもオフにするとバッテリーの回復は早い。反対に夜間や雨天時のウインチングでは電力の消費に一段と気を使ったほうがいい。ウインチ車の明かりを全て使わず、別のクルマから路面を照らしてもらうなど、工夫は色々できるだろう。
 


●ドライバーがいったん降りる場合はブレーキを
ワイヤーでひっぱられている状況でも、ドライバーが降りる状況ではクルマをしっか固定しよう。サイドブレーキを使い、ATならセレクトレバーをパーキングに。MTならローギアなど。
 
ワイヤー撤収時はドラムから離れて作業すべし
 

ウインチング後、ワイヤーをドラムに戻す作業も要注意。マスター巻き”でなくても人力である程度テンションをかけたり、”片巻き” を嫌ってワイヤーを左右に振り分けたり、という作業が必要だろう。でもドラム間近では危ない。ワイヤーのささくれにグローブがひっかかり、そのままフェアリードに巻き込まれてしまう、なんて事故が起きやすいからだ。


これを防ぐために、ドラムから最低でも1mは距離を離して作業して欲しい。
またコントローラーは他人に預けず、自分の手で持ちながら行うのがベスト。さらに言えば、コントローラーのコードがドラムに巻き込まれるとショートして暴走しかねないのでワイヤー近くでコードをブラつかせないよう工夫をして欲しい。
 


●オフロードに忘れ物をしないように

ストラップにシャックルなど、大切なアイテムを地面に置きっぱなしにしないように。一番いいのはアンカーから外したそばからシャックルとストラップを連結してしてしまうことだ。最低でもシャックルのアイボルトだけを放置するのはやめておこう。


上達への道
最後に。
1日のオフローディング後、アドレナリンが収まった頃にその日のウインチングを振り返って見て欲しい。自分達がアンカーとクルマの間を何度往復したのか? アンカーの選択ミスは何度起きて、何度掛け替えしたのか、その他にどんな反省点が挙げられるのか…。
それを省みることなくしてウインチングの上達はない。
スマートなオフローダーはウインチング前にベストなアンカーを探し当てるもの。そして余計な体力や電力は使わず、人馬共に疲れずして難所をクリアして行くものなのだ。

 


■取材協力
トレイル:http://www.trail.co.jp/