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フェード現象を未然に防ぐ〜ブレーキ強化とドライビング対策

2018.04.26
DIXCEL(ディクセル)


山間部の下り坂などで摩擦(フット)ブレーキを連続使用した結果、突然ブレーキの効き(制動力)が低下する「フェード現象」。
 
摩擦ブレーキを使用すると摩擦材が加熱されるのだが、特に下り坂などでブレーキを頻繁に使用すると、摩擦剤の素材であるゴムや樹脂などが設定された耐熱温度を超えることで分解/ガス化。これらがブレーキローターの間に入り込んでしまい、そのガス膜が潤滑剤のような働きをして、摩擦係数が低下してしまい症状が現れる。この現象が起きてしまうと、いくらペダルを踏んでも車両は止まらなくなってしまう。坂道での追突事故はフェード現象が引き金となって起きるケースも少なくない。
 
では、車重が重く負荷のかかりやすいハイエースなどの貨物車は、どの程度でフェード現象が起こるのか?
フェード現象を未然に防ぐには?
万一、フェード現象が起きてしまった場合の対応は?
そんな疑問を解決すべく、ブレーキマイスターのディクセル金谷氏自らの実体験に基づくお話を挙げながら、解決の糸口を探ってみよう。
文章/写真:石井秋良


金谷氏がテストを行ったのは、アップダウンの激しい六甲ドライブウェイ。
 
ちょうどイベント出展帰りで、ハイエースの荷室はブース出展による荷物で満載の状態。前方の車両が頻繁にブレーキを踏んでいたので、エンジンブレーキを活用せずに、あえてそれに合わせてフットブレーキのみで減速を繰り返して坂を下っていた。坂を下り終えて平地で信号待ちをしようとした際に、予測していた通りフェード現象が起こるのだが、それを見越してのドライブだったので、その後は、エンジンブレーキやサイドブレーキで対応。降りてみるとフロントホイールから煙が上がっていた、と言う。
 
「ノーマルのブレーキパッドがどの程度耐え得るのか」を実体験することで、ブレーキメーカーとしてドライバーに警笛を鳴らすことが目的だったのだが、荷物満載の状態だと、通常よりもさらにフェード現象が起こりやすくなることが検証されたとも言える。
 
もちろん一般的なハイエースユーザーが、イベント出展機材を満載するなんてケースは少ないかもしれないが、現場作業へ出向くハイエースはもちろん、行楽シーズンにアウトドア用品を満載で走るケースは十分に考えられる。パッド残量があるから大丈夫と油断していると、予期せぬタイミングでフェード現象に見舞われることもあり得るのだ。
 
その対策として、金谷氏がオススメしているのが、適正温度が高いパッドだ。ノーマルパッドはおおよそ300〜350℃までが一般的だが、これよりも適正温度の高いパッドに換装するのだ。これだけでもフェード現象抑制に効果的ではあるが、合わせてリアシューも交換するとフロント側の負担が減って、さらに効果が上がる。
 
とは言っても、わざわざフェード現象を引き起こすドライビングはご法度。坂道、とりわけアップダウンの激しい山道では、ギアをダウンすること=エンジンブレーキを有効活用することは、ドライビングの鉄則である。その上で、備えあれば憂いなしとして、ブレーキの見直しを計っておくことをオススメしたい。

 

左へ右へとコーナーが続く下り坂での連続ブレーキは想像以上にパッドを酷使する。Dレンジのまま坂道を下ると、フットブレーキを必要以上に使うことに。オーバードライブやセカンドギアといったエンジンブレーキを活用することでブレーキへの負担が軽減する。

 

積載物が無い状態と荷物が満載の時ではコーナーの挙動が異なる他、ブレーキに関しても効き方が異なる。さらには重量増加に伴って下り坂でいつも以上にスピードが出てしまう。フェード現象は、フル乗車や荷室満載の時ほど注意が必要と言える。

 

セーフティードライブを心がけていても、前を走る車両の突発的な急ブレーキなど、山間部の坂道では、ブレーキを酷使するシーンが多い。そして、ブレーキの効きに不安を抱いてからでは遅いのだ。あらかじめ耐熱性の高いパッドへ交換しておくことで、ドライバーに安心感を与えてくれる。

 

現場仕事に活躍するケースはもちろん、自家用車としてアウトドアライフを楽しむユーザーも多いハイエース。これからの行楽シーズン、フル乗車でアウトドア用品を満載にして山間部へ出向く予定のある方は、この機会にフェード現象に対しての正しい知識と、適切な対策品への換装を呼びかけたい。

 

ノーマルパッド(300~350℃)よりも適正温度の高いパッドを、ニーズ(対象ステージを参考http://www.dixcel.co.jp/pad/)に合わせてチョイスして欲しい。耐熱温度はそれぞれ、Mタイプが0~500℃、Xタイプで0~700℃。ちなみに両者の製品特性は、Mタイプはダストが少ないタイプ。重量物を積載する機会が多い場合は、ダストは出てしまうがXタイプがオススメ。
M type
国産車用:¥16,000〜(フロント・リア各)
輸入車用:¥18,000〜(フロント・リア各)
X type
国産車用:¥20,000〜(フロント)/¥18,000~(リア)
輸入車用:¥28,000〜(フロント・リア各)

 

鉄製品とは言え、ローターも消耗品なので段差(例:ETCカードの厚み!)がついていたら交換推奨。

 

PD type 国産車用/¥8,000〜
耐食性(防錆)を高めたスタンダードタイプ。純正品よりも高いパフォーマンスを発揮しながら、リーズナブル! 国産から輸入車まで幅広くラインナップ(写真左)。
SD type 国産車用/¥14,000〜
PD typeに対し、摩擦係数が最大で20%アップ。カスタム車両やハードな使用が多いユーザーにオススメ。6本スリット入り(写真右)。

 

ブレーキシュー RGX type 国産車用/¥15,000〜
リアシューも交換するとフロント側の負担が減ってさらに効果が上がる。たとえば、フロントにXタイプのようなスポーツパッドを装着すると、リヤがノーマルブレーキシューでは前後バランスが崩れてしまうことも。それゆえ、リヤブレーキシューを「RGX」に換装することで、安定した制動力を引き出すことが出来る。

 

DOT 5.1  ¥1,800/ℓ
フルードも吸湿するので、2年に1回の車検毎に交換を推奨。同社がリリースするブレーキフルード「DOT 5.1」はウェット沸点(長期使用した場合の沸点)が高く、さらに低温時の粘性(流動性)が優れているのが特徴。パフォーマンスユースでの長期使用や、寒冷地での最先端ABSシステムとのマッチングの面でも高い評価を得られている。