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ブレーキフルードの役割とその重要性に迫る

2019.04.26
DIXCEL(ディクセル)


フェード現象のみならず、ベーパーロック現象もブレーキ関係の大きなトラブルのひとつ。
このベーパーロック現象はブレーキフルードの劣化、沸騰による気泡の発生が主な要因だ。
この「フルードの劣化」を見逃してしまうと起こり得るトラブルも、早めに交換することでマスターシリンダーやブレーキホースの劣化をも未然に防ぐことが出来るのだ。
ブレーキペダルからブレーキシステムへと伝達する上で要となるブレーキフルードの重要性について、ディクセルの走る広報、ブレーキマイスターの金谷氏にお話しを伺ってきた。

文/写真:石井秋良

 

ブレーキフルードが劣化していると、
本来の性能が発揮出来ない…

まずはじめに、ブレーキフルードが油脂類の中で、一般的にどの程度「交換必須項目」として認知されているのかを、筆者なりに調査してみた。
 
四駆乗りのみならず、広く友人や知人、ショップで聞いてみたところ、エンジンオイル交換が頂点とするならば、ミッションオイルやクーラントが二番目、ブレーキフルードは3番目もしくは4番目というものだった。車検ごとの交換が推奨されているものの、意外と見過ごされがちな油脂なのだ。
 

それでは、もし放置していたならばどうなるか? と言えば、透明だったブレーキフルードは、空気や湿気、水分を含みオレンジ色へと変色する。そのままさらに放置すると、エンジンオイルの如く焦げた茶褐色に。もはやココまで来ると、ブレーキホースや各部を痛めつけ、最悪の場合は、ブレーキマスターシリンダーのオーバーホールが必要になってしまうなど、即交換というレベルだ。
 
ちなみに劣化したブレーキフルードを使い続けると、「ベーパーロック現象」というブレーキをかけた際に発生する熱でオイル内の水分が沸騰、その沸騰によって生まれた気泡がブレーキング時に圧縮されることで、ブレーキペダルからの伝達が鈍り、強く踏み込んでもブレーキが効かなくなってしまう症状が起こってしまう。この症状が起きる前に、早期発見と治療が必要となるのだ。
 
では何故、ここまで放置されてしまうのか?と言えば、段階を経て少しずつブレーキの効きが甘くなっていくので、ドライバーからすると「こんなものか」と、気が付きにくいことが、原因のひとつでもある。
 
ブレーキパッドは残量で一目瞭然、ローターも然り。しかし、エンジンルームを開けなければ確認できないブレーキフルードは、見過ごされがちとなってしまう。

 

実際に筆者も、タイヤ外径がふた周りも大きくなった2トン半のフルサイズ4×4を取材の足にしているのだが、普段から乗っているがゆえに、車体が重いからブレーキの効きはこんなものか…と、タカをくくっていた始末。
 
お恥ずかしい話ではあるが、記憶を辿ってもブレーキフルードをいつ交換したのか解らないほど放置してしまった結果、真っ黒になっていた。
 
そしてこれがベーパーロック現象の引き金となり、急ブレーキ時の空走距離を長くしてしまい、著しい制動力の低下を引き起こしていたことは、まさに盲点だった。
 

そこで、東大阪のF.A.S.Tへ作業を依頼して、早速ブレーキフルードの交換を行なった。ディクセルがリリースする3種類のブレーキフルードDOT4、DOT5.1、328Racingの中から「DOT5.1」をチョイスした。
 
理由はウェット沸点が高く、低温時の粘生に優れることが特徴のブレーキフルードだからだ。
 
ちなみに、車体が重くオフロード走行などハードな使用が多い場合は「DOT5.1」を、一般的な街乗りがメインな普通車ならば「DOT4」がオススメ。クルマのジャンルや使用途に応じてフルードを選定することが望ましい。
 
なお、ブレーキフルードの交換時には、ブレーキを踏む人とブレーキラインに残った古いフルードを取り除くふたりの作業員が必要となるため、整備工場や行きつけの専門店へ作業を依頼するが必要となる。
 
交換前と交換後の変化は、まずブレーキペダルの踏み味がダイレクトに変化。以前は踏んでからもう一踏みしないと効きが悪かったが、交換後は空気の張ったボールのような踏み味。ペダルからブレーキへの伝達力も体感できるレベルで変化しており、いつもなら停止線を少し超えてしまっていたのが、同じタイミングそして同じ力でブレーキを踏んでも、停止線手前でしっかりと止まることが出来た。
 
フルサイズ4WDだから、ブレーキングはこんなものかと諦めていたのだが、ブレーキフルードの交換だけでここまで制動力が変わるものなのかと、驚いたほど。
 
制動力の高いブレーキローターやブレーキパッドへの換装はもちろん大切なのだが、ブレーキフルードの重要性もしっかりと心に留めておきたい。
 
車重のある4×4をドレスアップし、さらに吸排気系やコンピューターチューン等を施すことで「走る」ためのパフォーマンスを手に入れることが出来たとしても、否、走行性能が高まればこそ、それを制御=コントロールするための制動力が必要となるのだ。
 
ブレーキフルードの交換は、思っている以上に費用対効果が高い。車検時での交換はもちろんだが、ブレーキパッドやローターの換装時にも、ブレーキフルードの交換をオススメしたい。

 

ブレーキフルードを選ぶ際には、車両や走行ステージ、気候風土など、総合的に判断したい。

 

ディクセルがリリースしているブレーキフルードには、交換時期を記録するラベルが付属されている。2年に一度の車検時には、全量交換(1〜1.5ℓ)を行なうことを同社では推奨している。ブレーキパッドやローターを交換する際にも、合わせてブレーキフルードの交換をオススメしたい。

 

DOT5.1新品の状態で沸点計測を行なってみたが281℃という数値が表示(カタログ数値は269℃)された。
そしてブレーキフルードが劣化すると、沸点が50〜60℃近く下がってしまうという。
沸点が下がると気泡が出やすくなるため、ブレーキの効きが悪くなってしまうのだ。

 

ブレーキフルードを交換する際には、ブレーキを踏む人とブレーキラインに残った古いフルードを取り除く役の最低ふたりが必要となる。整備工場や行きつけの専門店へ作業を依頼しよう。

 

ブレーキフルードの交換を怠ってしまった結果、ご覧ん通り、真っ黒になっていた。
実際に、新品のブレーキフルードに交換し試乗してみると、その違いに筆者は愕然としたほど。
徐々に効きが悪くなっていくために、つい「こんなものか」と身体が慣れてしまう。それゆえ車検時の交換は必ず行なって欲しい。

 

BRAKE FLUID DOT5.1
1ℓ 1,800円(税別)
10本入りケース 18,000円(税別)
 
低温時の流動性に優れているため、寒冷地や最先端のABSシステムとのマッチングが良好な「DOT5.1」。ウェット沸点が高いため、パフォーマンスユースにもオススメだ。クラストップレベルの性能ながら、リーズナブルな価格も魅力だ。
 
◆ドライ沸点:269℃
◆ウェット沸点:187℃
◆粘度(-40℃):810cSt
◆粘度(100℃):2.17cSt
◆pH:7.49

 

BRAKE FLUID DOT4
1ℓ 1,500円(税別)
10本入りケース 15,000円(税別)
 
エンジンオイル同様に、ブレーキフルードも劣化する定期交換品。定期交換することで、ペダルタッチも良好となり、ブレーキホース等の劣化を防ぐことが出来る。「DOT5.1」「328 Racing」同様、交換時期を記録するラベルが付属されている。
 
◆ドライ沸点:273℃
◆ウェット沸点:173℃
◆粘度(-40℃):1294cSt
◆粘度(100℃):2.37cSt
◆pH:7.88

 

328 Racing
0.5ℓ 2,400円(税別)
12本入りケース 28,800円(税別)
 
世界最高レベルのドライ沸点328℃を実現、DOT4規格をクリアした数少ないレーシングフルード。ストリートからサーキット走行まで幅広く対応、さらにメンテナンス性にも優れている。グリコール系のため、シール等ゴム類への影響もない。カッチリしたブレーキフィーリングは、一般車両にもオススメだ。
 
◆ドライ沸点:328℃
◆ウェット沸点:204℃
◆粘度(-40℃):1698cSt
◆粘度(100℃):2.59cSt
◆pH:7.15
 
◆お問い合わせ:http://www.dixcel.co.jp/